11ダミー

借金で離婚したい夫(妻)はどうするべき?別れた後の借入金はどうなる?

借金癖のある配偶者、これは困りますね。

しかも、家や車のローンならまだしも、
ギャンブルや遊びの金の借金、あるいは
買い物依存症での借金などは、始末に負えません。

それも一回だけの借金ではなく、完済す
る前に次の借金を繰り返すとなると、も
うどうしようもありません。

借金をしてもきちんと返せるのなら未だ
良いのですが、繰り返しの借金では必ず
どこかで破綻が生じます。

家族の生活が脅かされるようになるのです。

そのような時には誰しも離婚を考えるでしょう。

借金を理由に夫(妻)と離婚することは、
可能なのでしょうか?

また、別れた後にその借金はどうなるのでしょうか?

今回はそんな深刻な問題を見ていきましょう。

借金がある夫(妻)と離婚したい時は?

借金がある夫(妻)と離婚したい時、
その借金を理由に離婚できるものでしょうか?

これは借金の程度や額にもよりますが、
離婚の法的手続きによっても異なります。

まず、離婚の法的手続きから見てみましょう。

離婚の法的手続きには、3種あります。

  1. 協議離婚
  2. 調停離婚
  3. 離婚裁判

この3種は、この順でしなければならない
ということはなく、いきなり調停でもかまいません。

しかし、裁判の場合は必ず先に調停を行います。

調停を飛ばしていきなり裁判にはできません。

通常はまず協議、そこで解決できなけれ
ば調停、最後に裁判というケースが多いですね。

協議離婚とは、その名の通り
当事者である夫婦間で協議をして離婚するものです。

勿論、裁判所に行く必要もなく、弁護士
を依頼する必要もありません。

調停離婚では、
裁判官(家事調停官)、調停委員、
調査官が判断をします。

調停では裁判と違い、裁判官はいますが、
原則として同席はしません。

調停では2名以上の
民間の調停委員が裁判官の代わりをつとめます。

調停委員は、刑事裁判での裁判員に似た
ような制度ですが、民間から選出される
非常勤の裁判所職員という立場になります。

この調停委員は、忌避などはできません。

そして裁判と決定的に違うのは、
あくまでも当事者の合意による決定
となることです。

つまり、夫と妻のどちらかが反対すれば
調停は不成立となります。

調停では裁判所の「このようにしなさい」
という判決や裁定はなく、あくまでも
当時者間の合意が前提です。

当事者間の話し合いの結果は調停調書に
纏められますが、それも合意した内容のみです。

但し、この合意した内容はある程度の
拘束力があり、これを反故にすると相手は

裁判なしで強制執行手続ができます。

この調停でも合意に達しないと、
裁判ということになります。

離婚裁判

離婚裁判で離婚するためには、
「法律上の離婚理由」が必要です。

法律上の離婚理由は、民法770条1項各号
に定められている以下の5つです。

  1. 不貞
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復しがたい強度の精神病
  5. その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、
回復しがたい強度の精神病などは、今回
の借金による離婚には関係ありませんので、省略します。

その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

これが借金による既婚の場合に
該当することになります。

この場合、ただ「配偶者が借金している」
という理由だけでは、
この事由に該当しないと考えられています。

つまり、借金をしていても、ちゃんと収
入があり、生活が成り立っていれば、離
婚の理由には該当しません。

ところが、配偶者がお金を遊びに使いま
くったり、不要な買い物を繰り返したり
して、家族としての生活が成り立たない場合は、この事由に該当することになります。

それでも、借金だけでは離婚裁判に勝つ
のは難しいようです。

しかし、明白に借金によって「婚姻関係
を継続し難い」場合は、裁判でも離婚で
きる場合もあるようです。

別れた後の借入金はどうなる?

離婚した後の借入金は、
原則として返済する義務はありません。

夫婦とはいえ、それぞれは別の人格であ
り、他人なのです。

他人が借りたお金の返済義務はありません。

但し、連帯保証人の時は別で、これは
返済をしなければなりません。

また、借金がある配偶者と離婚した場合、
相手に対して養育費や慰謝料は請求できます。

借金があるからといって、養育費や慰謝
料の支払いを拒むことはできないのです。

養育費は親の子供に対する扶養義務によ
り生じるものですし、慰謝料は損害賠償
義務によって生じるものです。

したがって、借金は養育費や慰謝料の
支払い義務とは無関係なのです。

離婚後の返済について、ひとつ注意し
なければならない点があります。

それが民法761条で、

「夫婦の一方が日常の家事に関して第三
者と法律行為をしたときは、他の一方は、
これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。

ただし、第三者に対し責任を負わない旨
を予告した場合は、この限りでない。」

と、なっています。

これを日本語に翻訳しますと、このようになります。

夫婦の一方が夫婦の日常生活に必要な買
い物などをした場合、その代金について
配偶者も支払う責任があるということです。

実際の判例でも、妻が買った電子レンジ
の代金を支払うよう命じられた例があります。

財産分与と借金の関係は?

夫婦が離婚すると、二人の共有財産は
分割されることになります。

夫婦の預金や土地建物といった財産は
二人で分けるわけです。

では、借金があった場合はどうなるのでしょうか?

共同で購入した住宅のローンがある場合は、
ローンの残りの返済額も、
夫婦で分割して負担することになります。

後200万ローンが残っている場合は、その
200万をどのように分担するかは、夫婦間の
協議によります。

離婚の裁判になれば、裁判所の判断となるわけですね。

ただし、配偶者の一方が、自分個人のた
めに借り入れた場合は、
全てその本人が返済する義務があります。

連帯保証人の時は?

前項で、離婚した後の借入金は、原則と
して返済する義務はありませんが、
連帯保証人の時は別、と書きました。

夫婦であっても別人格なのですから、
配偶者の借金を払う義務はないのです。

しかし、連帯保証人になっている時は、
夫婦、他人とは関係なく、
支払い義務が発生します。

まず第一に、単なる保証人と連帯保証人
は全く違います。

単なる保証人は、お金を借りている人が
支払いを怠らないように助言するだけです。

お金を借りている人に返済能力があれば、
保証人には返済の義務はありません。

しかし連帯保証人となると、お金を借り
た人と同じ責任を負わなければなりません。

そのため、借りた人が返済できない場合
は、連帯保証人が代わって返済をする 
ことになります。

では、連帯保証人をやめる方法はあるの
かというと、これは全額返済以外には、
ほぼ不可能です。

どうしてもとなると、

  • ローンの借り換え
  • 代わりの連帯保証人を立てる
  • 住宅ローン相当分の固定資産を担保にする

などの方法がありますが、いずれも現実
には不可能に近いものばかりです。

ローンの借り換えは
貸してくれるところがない
場合が大半でしょう。

代わりの連帯保証人を立てるのは、その状態
で連帯保証人になってくれる人はいないでしょう。

住宅ローン相当分の固定資産を担保にす
るのは、「もしそれだけの財産があれば」
の話です。

つまり「たられば」なのです。

というわけで、どれも非現実的ですね。

結び

借金がある夫(妻)と離婚したい時、
ただ借金があるというだけでは、
離婚の理由にはなりません。

ただし、「婚姻関係を継続し難い重大な
事由」がある場合は、調停や裁判で認め
られることもあります。

それもただ「配偶者が借金している」
という理由だけでは、この事由には該当
しないと判断される場合が多いのです。

その借金のために、家族としての生活
成り立たない場合は、その事由に該当す
ると認めらるようです。

離婚した後の借入金は、
原則として返済する義務はありません。

夫婦とはいえ、それぞれは別の人格であ
り、他人なのです。

ただし、夫婦のどちらかが連帯保証人に
なっている場合は、返済をしなければなりません。