アストレックス司法書士事務所

闇金は借り逃げが出来るのか?返済義務は?取り立てに応じる必要は?

闇金融、いわゆる闇金は、殆どが違法な存在です。

金利を見ても法定の20%の数十倍の金利
ですし、取り立ての方法も、昔のよう
に暴力は使いませんが、実質違法な取り立て方をします。

そのやり方は悪辣としか言いようのない
ものですが、にもかかわらず未だに多く
の人が闇金の取り立てに怯えているのです。

闇金が怖いのなら借りるな、ということ
は簡単ですが、それらの人々にお金を貸
してくれる所は、闇金しかないのが実状なのです。

では、そのような弱い立場にある人は、
どうすればよいのでしょうか?

今回は、闇金は借り逃げが出来るのか、
返済義務はあるのか、取り立てはどん
なことをするのか、などを見ていきましょう!

闇金は借り逃げが出来るのか?

闇金の金利は、凄いとしかいいようのな
いものです。

「貸金業の規制等に関する法律等の一部
を改正する法律」では、

  • 10万円以内:年金利20%以内
  • 10万円~100万円未満:年金利18%以内
  • 100万円以上:年金利15%以内

となっています。

法定では、最高の金利でも20%以下なのです。

しかし、闇金は法律など最初から無視しています。

上の画像にある金利で本当に貸してくれ
闇金などあるわけがありません。

「あれは最高の条件の場合で、あんたの
場合はこれこれだからこうなるんだよ」
となるわけです。

10日で30%(トサン)、1週間で20%(週2)
などが多いのです。

これらの金利は年利に換算すると、
このような金利になります。

  • 種別 年利
  • 法定 20%
  • 10日で30%(トサン) 1080%
  • 1週間で20%(週2) 1043%

年利1000%以上なんて、金利だけで元金の
10倍以上じゃないですか。

これでは毎月元金を返済しているようなも
ので、いつまで経っても完済はできません。

そこで出て来るのは、闇金からお金を借
りて借り逃げ(踏み倒しとか借りパクな
どとも言います)はできるのか、ということです。

この回答は一言で言えば、
「できるけどできない」
というものです。

それじゃ回答になっていないじゃないか、
なんて言わないでくださいね。

以下に詳しく説明いたします。

できる

まず「できる」というのは、借り逃げ
(踏み倒し)そのものは、可能です。

まず、法定を越える高金利の契約は違法
であり、立派な犯罪です。

これに対する刑は、10年以下の懲役もし
くは3000万円以下の罰金、又はその両方です。

また、平成20年6月10日最高裁判例
(平成19(受)569号事件)により、闇金
による貸付金は民法708条の不法原因給付とする判例があります。

つまりは、闇金の契約自体が無効ですの
で、返済する必要は一切ありません。

というわけで、借り逃げはできると
いうことになります。

できない

一方、「できない」というのは、一応
闇金から借りた借金には「返済義務が
ない」と言われてはいます。

しかし、それは
法律で明確に決められているとは言い難い
のです。

「違法な金利で借りたお金は、民法708条
「不法原因給付」により、返済しなくて
良い」といった判例が、最高裁判所平成20年6月10日判決によって下されています。

しかしこれは、「闇金からは借り逃げを
してもよい」とか、「闇金には返済しな
くてよい」とか書いてあるわけではありません。

ともあれ、もし「最初から返済しないつ
もりで、金を借りた」ということであれ
ば、詐欺に該当する恐れもあります。

つまり、闇金への借り逃げは犯罪になる
可能性もあるわけです。

相手の違法にはこちらも違法で対抗とい
うのは、危険すぎますよね。

もちろん、最初はちゃんと返すつもりだっ
たが、あまりの高金利でできなくなった、
というケースは別です。

もう一つのできない理由は、違法な貸金業
者は犯罪集団だからです。

これらの犯罪者の間では、「メンツ」をこ
とのほか大事にします。

彼らにとっては、
メンツを潰されることは殺されるのと同じなのです。

そのため、回収費用で赤字になったとして
も、どこまでも借り逃げの相手を追ってきます。

彼らには全国的な組織がありますから、
夜逃げをしていてもいずれは発見されます。

その時のことを考えると、踏み倒して
夜逃げというのは、安直すぎます。

それに、仮に見つからない場合でも、
家族や友人、会社には激しい取り立て
が行われます。

その家族や友人、会社の迷惑や恐怖まで
考えると、借り逃げはできない、と考え
た方が良さそうですね。

返済義務はあるのか?

前項で書きましたように、「原則として」
闇金業者から借りたお金は返済する義務はありません。

これは元金だけでなく、利息分も支払う義務はありません。

その根拠となっているのが、前項でも書
いた、最高裁裁判所平成20年6月10日の判決です。

最高裁裁判所平成20年6月10日の判決

反倫理的行為に該当する不法行為の被害者
が,これによって損害を被るとともに,当

該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を
得た場合には,同利益については,加害者
からの不当利得返還請求が許されないだけ

でなく,被害者からの不法行為に基づく損
害賠償請求において損益相殺ないし損益相
殺的な調整の対象として被害者の損害額か

ら控除することも,上記のような民法70
8条の趣旨に反するものとして許されない
ものというべきである。

このように、闇金融が貸したお金は不法
原因給付(民法709条)に該当し、闇金業
者が不当利得として返還請求することは許されないのです。

とはいえ、この判例の解釈にも色々と問題
があり、かなり難しい所ではあります。

その取り立てはどんなもの?

闇金の目的は、元金の回収ではなく
金利の取り立てです。

元金はどこまで行っても元金以上にはな
りませんが、金利分は元金の
10倍以上の利益になります。

その金利を取るために、闇金業者は色々
な取り立てをするのです。

闇金業者はお金を貸す前に、「名前」
「電話番号」「住所」「家族」「家族の
住所」「勤務先」などをを聞きます。

もちろん、これに
全て答えないとお金は貸してくれません。

しかも、この情報は、情報業者に流されることもあるようです。

そして支払いが滞ると、この情報により
本人はもちろん、家族や会社にも苛烈な
取り立てを行います。

その取り立て方法は、このようなものです。

  • 本人を脅迫する
  • 1日に数十回も電話をしてくる
  • 家族や親せきにいやがらせをする
  • 子供の学校に嫌がらせの電話をする
  • 会社に執拗な取り立て電話をする

本人を脅迫するのは
無論のことです。

「死ね」、「殺すぞ」、「埋めてやる」、「今から家に行くからな」などの脅しをかけてきます。

1日に数十回も電話をしてくるのは、
ストーカーと似た手口です。

要するに嫌がらせですね。

家族や親せきにいやがらせをする
のは、家族や親戚にとっては
大変な迷惑でしょう。

数十人分のピザを届けさせたり、
子供のいる家庭にデリヘルをよんだりするのです。

子供の学校に嫌がらせの電話をする
こともあります。

「あんたの学校の親は、借りた金も返さな
いんだぞ!」というわけです。

会社に執拗な取り立て電話をするのは、
本人にとっても会社にとっても、
非常に困ります。

実際にこれによって退職せざるを得な
かった人もいるそうですよ。

結び

闇金は借り逃げはできるのかといえば、
「できるけどできない」
のです。

闇金の金利は年利1000%以上、金利だけで
元金の10倍以上です。

法定では金利は年20%以下となっています
ので、このような暴利は、完全に違法です。

したがって、違法な取り引きは無効とさ
れ、借り逃げはできるということになります。

しかし、実際に借り逃げをするのは、危険が多すぎます。

本人自身は勿論のこと、家族や会社にも
容赦ない取り立てが行われ、他の人に大
変な迷惑をかけてしまいます。

これが「できるけどできない」ということなのです。

もっとも安全な方法は、闇金からはお金
を借りないことですが、さて、闇金以外
でお金を貸してくれるところがあるかないかが問題ですね。