自己破産

自己破産の後でも海外旅行には行ける?パスポートの期限や更新はできる?

借金の返済が出来なくなった場合、
最後の解決法として「自己破産」
という方法があります。

自己破産は4種ある債務整理の中でも、
借金の減免幅が最も大きく、
借金ゼロにできるのです。

しかし、債務整理の中で最も使われるのは、
任意整理という減免幅が最も小さい方法です。

おなじ債務整理なら、できるだけ借金を
減らせるものがよいのに、なぜあえて
任意整理を選ぶのでしょうか?

それは、債務整理には必ずデメリット、
つまり各種の制限などのペナルティが
あるからです。

そして、
最も大きいデメリットがあるのが自己破産
です。

減免幅とデメリットは正比例しているのですね。

その自己破産のペナルティとして、海外
旅行やパスポートの取得ができない、
というものがあります。

これは、実はウソなのですが、実際に
できないケースも希ではありますが
あるのです。

そこで今回は、自己破産の後でも海外旅行
には行けるのか、パスポートの申請や更新
はできるのか、などを調べてみました!

自己破産の後でも海外旅行には行ける?

冒頭で書いたように、自己破産は債務整
理の中でも最も大きなペナルティがあります。

家や車などの高額な資産は、全て処分
対象となり、住み慣れた土地から
立ち去らねばなりません。

それだけではなく、資格の取得にも制限
があり、また一定期間は一定の職業に就
くこともできません。

  • 弁護士や税理士、公認会計士、司法書士など
  • 宅建業者
  • 貸金業
  • 旅行業者
  • 生命保険外交員
  • 警備員
  • 成年後見人、保佐人、補助人など

これらが制限される職種ですが、これは
裁判所の免責が降りれば、解除されます。

免責が出る期間は、おおよそ半年程度で、
その後は自由にどんな職種にも就業できます。

自己破産での規制は、資格の取得と職業
が主なもので、後はほとんどありません。

もちろん、選挙権が無くなるなどは、
完全なデマです。

また、自己破産の記録が、戸籍や住民票な
どの身分を示すものに残ることは全くありません。

海外旅行やパスポートの取得が不可とい
うのも、デマに過ぎません。

いつでも自由に海外旅行に行けますし、
パスポートの申請や更新もできます。

但し、後項で書くような例外もあり、
その場合は海外に限らず旅行が制限
される場合があります。

自己破産には、「破産管財」と「同時廃止」
の2種類があります。

自己破産の場合は、ほぼ70%から80%は
「同時廃止」を利用しています。

同時廃止は、債権者に配当するような財
産がない人が該当しますので、
大半の人がそれに入ります。

この場合は、旅行の制限は海外国内を問
わず、一切ありません。

一方、「破産管財」については、
破産法第37条による旅行の制限があります。

ただし、これも資格や職業の場合と同様に、
一定期間のみの制限となっています。

おおよそ半年から1年程度で、
この制限も解除されます。

これについては、第3項で詳しく紹介します。

パスポートの申請や更新はできる?

前項でも書いたように、自己破産をする
とパスポートの申請や更新ができなくな
るというのは、全くのデマです。

想像ですが、これは破産管財事件では、
免責が出る迄の間は旅行が制限される場
合もある、という件に尾ひれがついたものではないかと思います。

パスポートの発行は、旅券法という法律
に基づいています。

旅券法第13条には、パスポートの発行が
禁止・制限されるケースについて定められています。

  1. 死刑、無期懲役、長期二年以上の刑により逮捕、拘留されている者
  2. 禁固刑以上の刑に処され、執行中もしくは執行猶予中の者
  3. パスポートの偽造をした者、偽造未遂をした者
  4. 渡航先の法律によりその国に入る資格がない者
  5. 外務大臣に(旅券の発給により)日本の国益を害すると認定された者

お読みいただければわかるように、パス
ポートの発行などの制限は、ごく一部の
犯罪者に限られています。

自己破産は犯罪ではありません!

自己破産とパスポートは全く関係がないのです。

ただし、法律と常識はしばしば食い違うことがあります。

自己破産は、借金で苦しみ、その結果と
して借金は免除にして欲しいというお願いです。

つまりは、
合法的な借金の踏み倒しなのです。

なのに、「海外に行きたいからパスポー
トも欲しい」と言ったら、合法的に
借金を踏み倒された債権者は、どう感じるでしょうか?

「そんな余分な金があるのなら、その分
を返済に回してほしい」と思うのが普通でしょうね。

ですので、少なくとも免責の期間位は
海外旅行は自粛しましょう。

せいぜい半年か1年の間じゃないですか。

まあ、現実には自己破産した後の状態は、
金目のものは大半は処分され、99万円以
下のお金しかありません。

ですから、実際に海外に遊びに行ったと
いう話は聞いたことがありませんね。

管財事件と同時廃止事件とは?

自己破産の手続には、
管財事件と同時廃止事件の2つがあります。

破産手続とは,破産者の財産を処分して
お金に換え、債権者に公平に弁済・配当
するというものです。

これらの財産の管理業務等の全てを、
裁判所が直接行うわけではありません。

これらの手続をすべて裁判所が直接行う
となると、裁判所の負担が大きくなってしまいます。

そのため、財産管理業務等は裁判所が選
任した、破産管財人が行います。

破産管財人は、破産管財人として登録さ
れた弁護士が受け持つのが通常です。

この破産管財人が選任される破産手続が、
「管財事件」と呼ばれる手続きです。

自己破産の手続も、
原則として管財事件として扱われます。

個人の自己破産における管財事件の場合
は、裁判所に納める予納金の金額が少額
で済む、少額管財という手続によって進められます。

破産手続の原則は、管財事件です。

破産手続の目的は、破産者の財産を処分
してお金に換え、債権者に弁済・配当することです。

しかし、お金に換えられる財産がないこ
とが明白な場合にまで、破産管財人を選
任して手続を進めていくというのは、お金の無駄です。

そのため、破産者に充分な財産がない時には、
破産手続開始決定と同時に破産手続廃止
の決定がされます。

この廃止の決定を、破産手続の開始と同
時に行うことから、「同時廃止」と呼ばれています。

同時廃止事件では、管理すべき財産がな
いので、破産管財人が選任されることも
ありません。

破産手続きとしては、管財事件が原則で、
同時は縊死事件は例外となります。

しかし、個人の自己破産の場合は、前項
で書いたように、同時廃止が圧倒的に多くなっています。

以下は管財事件と同時廃止事件の制限比較です。

       管財事件      同時廃止

海外旅行   制限あり      制限なし

引っ越し  裁判所の許可が必要  制限なし

選挙権      選挙権はある

戸籍・住民票   破産記録は残らない

身分証明書    ほぼ影響はない

マイナンバー   破産記録は残らない

個人の自己破産の場合は、破産者名簿に
名前が載ることはほとんどありません。

結び

自己破産での制限は、資格の取得と職業
が主なもので、後はほとんどありません。

もちろん、選挙権が無くなるとか、海外
旅行に行けない、パスポートが取れない
などは、完全なデマです。

また、自己破産の記録が、戸籍や住民票な
どの身分を示すものに残ることは全くありません。

但し、破産には管財事件と同時廃止事件の
2種があり、管財事件の場合は免責が出る
迄は、旅行の制限があります。

個人の自己破産では、大半は同時廃止事件
が大半なので、海外旅行の制限はないのが
普通です。